NPO法人 セイセイ生き生きクラブ

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障害者の社会参画を目指して、
就労移行支援施設「ハートランド」開所

NPO法人セイセイ生き生きクラブ(杉山一成理事長)が、静岡市清水区に障害者のための就労移行支援施設「ハートランド」を開所した。同施設は特別支援学校を卒業しても働き場所のない障害者に、職業訓練を実施し就労を後押しする。清掃業を中心とした就労移行事業は、極めて異例の取り組みだ。平成18年4月1日より障害者雇用促進法が施行され、従業員56人以上の民間企業には全従業員数の1.8%の障害者雇用が義務付けられたが、企業の理解と協力はまだまだ足りない。「障害者の雇用を改善するためには社会のシステムが必要」と語る杉山理事長と「雇用機会の提供は企業の使命」と断言する法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授が課題を語り合った。

特別支援学校と社会のインターフェイス

坂本私はこの3月に「静岡県工賃倍増5カ年計画策定・推進委員会」の会長として、障害のある人の工賃水準向上のための取組指針をまとめたばかりです。杉山さんが障害者の就労移行支援事業を始められたと聞き、今日の対談を楽しみにしていました。

杉山ありがとうございます。ご存知の通り、就労移行支援事業は平成18年10月に施行された障害者自立支援法に基づく福祉サービスの一つです。私たちは5月1日、静岡市清水区の県立清水東高校近くに、就労移行支援施設「ハートランド」を開所しました。

この施設は、特別支援学校を卒業しても働き場所がない65歳未満の知的障害者、精神障害者を対象に職業訓練を行い、就職まで導くことを目的にしています。定員は20名、在学期間は最長で2年間です。
修了後はどこで働いても自由です。ただ、実際に働き場所を見つけることは容易ではありませんので、自社(セイセイサーバー)や私どものビルメンテナンス業界が受け皿になることも念頭に置いています。
このため在学中には、当社の主な事業である清掃作業の技術を学びます。教えるのは、現役引退後も社会に参加し続けたい当社のOBです。また、社会参画に備えて、基礎体力訓練、職業人・社会人としてのマナー、言葉づかいなどの一般常識も学びます。

坂本なるほど、「ハートランド」は特別支援学校と企業のインターフェイスの役割を果たすのですね。学んだことがすぐに職場で役に立つとすれば、障害者の雇用を進める上で、より具体的な支援になりますね。感心しました。

障害者に就労の場を提供するのは企業の使命

坂本御社には社会的弱者を支援する姿勢が以前からあったのですか。

杉山当社は、今年で創業43年を迎えます。創業者の杉山正男は、「清掃は心である」という言葉を社訓とし、市民が明るく幸せな生活を送る一助になればとこの会社をつくりました。
そこには、「お年寄りや障害者など弱い立場の人達も自分に出来る仕事をしながら自立し、ささやかながらも人間として立派に貢献出来るようなしくみのある社会を築きたい」という思いが込められていました。 さらに、清掃という仕事に託したのは「日本で古くから脈々と伝えられた『掃き清める』という概念こそが、社会を浄化させる原点である」という信念でした。決して金儲けの手段として事業を起こしたわけではありません。 この精神は今に至るまで続いています。

坂本おっしゃるとおり、人間の究極の幸せは働く喜びです。そして、ハンディキャップを負う方々にその機会を提供することは、強者である企業の社会的使命です。御社は、強者として弱者の役に立つという使命を果たされているといえます。

杉山お褒めの言葉をいただくと恐縮してしまいます。企業として存続していかなければなりませんから、思うに任せないことが多々ありますから。ただ、私たちの会社では高齢者や障害者が生き生きと働いています。働くことにより、生活に張りができ、心身とも健康な状態を長く保つことができるのでしょう。
坂本私が知る岐阜県の社会福祉法人では、特別支援学校を出て就労できなかった人たちを必要最低限の授業料でトレーニングし、この社会福祉法人の理事長がかつて代表を務めていた会社で雇用しています。その点、ハートランドはNPOが運営主体なのですね。

杉山これは、12年前に発足させた社員の福利厚生、相互援助、社会奉仕などを目的とするセイセイ生き生きクラブが母体となっています。社員が主体ではありますが、会員には退職者、関連会社、協力企業の社員や一般市民も含まれています。
単に社員の福利厚生団体としてではなく、その広がりを地域社会全体にも求め、皆でお互いに助け合いながら、『幸せに生きていこうよ』という前社長の哲学から生まれたものです。 NPOはこの発展形態として、障害者の方々の「職業能力の開発」「雇用機会の拡充」を目的に平成17年に立ち上げました。高齢者が体力的に清掃の仕事を続けることが厳しくなったとき、今度はその経験を障害者の就労指導に生かしていただこうと考えたのです。

杉山なぜそのように考えられたのですか。

杉山高齢者のきめが細かく、ねんごろで丁寧な手ほどきは、障害者の指導に最適だと感じました。若い指導者ですと同じことを何度も教えるうちについ苛立ってしまうことがありますが、経験を重ね世の中の悲喜を知る高齢者なら、相手が理解するまで待ち、優しく教えてあげられるでしょう。
これまで、県内の各特別支援学校に講師を派遣、企業人としての心構えと清掃の基本を作業学習の一環として教育。また、清水技術専門校より実習生を受け入れ、3ヶ月の訓練を実施して企業への就職を支援しました。さらに、大学、高校、学習塾、ビルメンテナンス会社の外注で障害者の仕事場を確保、特別支援学校より現場に実習生を受け入れるなどの活動を続けています。

坂本そうした流れがあったのですね。

杉山そうです。このような独白の障害者に対する就労支援を、学校関係者を中心に評価していただきました。それが、平成18年10月に障害者白立支援法に基づく活動として認められ、今回のハートランド立ち上げに至ったのです。

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