
最高齢者は80歳
坂本OBの高齢者がハートランドで障害者に清掃技術を教えるのも価値が高いですね。高齢者間題について言いますと、日本の65歳以上の高齢者人口は、今後20年間で約一千万人増加しまた一方で15歳~64歳の生産年齢人口は同じくらい減少していきます。
日本が成長を続けていくためには、高齢者に元気に働き続けてもらい、労働生産性を高めていくことが国家戦略として必要になるでしょう。セイセイサーバーはその点に早くから気付いていたのですね。
坂本退職は会社の都合ではなく本人の都合ということですね。磐田にある農機具製造の会社では、お年寄りに合った仕事の仕組みを作り、60歳~80歳代の方が80人も働いています。最高齢者は87歳だそうです。
社長になぜ高齢者のためにそこまで尽力するのか聞いたところ、「ひとつは、思うだけでなく本気で実行する心。もうひとつは私がおばあちゃん子であったこと」とおっしゃいました。今は核家族化でそういう心も欠けています。
日本における障害者雇用の厳しい現状
坂本今年のCSR白書を見ますと、障害者の法定雇用率を満たす企業は全国で6割しかありません。日本を代表する大企業の中にも法定雇用率1・8%を下回っているところがあります。対してセイセイサーバーの障害者雇用率は11・4%(平成19年6月)と、素晴らしく高いですね。
杉山内訳を申しますと、障害者のうち36%が知的障害者(重度4%)、43%が身体障害者(1級~5級)、21%が精神障害者です。また、セイセイ生き生きクラブ(ハートランド入所生を含む)は、知的障害者が72%、精神障害者が28%です。
杉山当社の場合、お客様に恵まれていることも大きいですね。障害を持っていても健常者となにも変わりはないと話すと、快く引き受けてくれるのです。
坂本それは、弱者の人を自立させたいというセイセイサーバーの思いがお客にも伝わっているからでしょう。杉山社長の努力を周囲の人たちがきちんと見ているのです。
静岡県の障害者雇用率は、残念ながら1・6%です。産業面で一位を目指すのもいいでしょうが、こういう大切な指標でこそ静岡県は全国一になってもらいたい。そして、セイセイサーパーのような企業を支援する制度設計にも積極的に取り組んでほしいと思います。
私は今まで6千社以上の会社を見てきましたが、障害者も高齢者もいる会社では、健常者までがいい顔をして働いています。そうした企業が価値あるサービスや商品を生むのです。「そんなことはキレイごとだ」と言う人もいますが、強者の使命を果たしている企業は実際にあるのです。
杉山かつて七夕豪雨の時、朝4時頃に藤枝の家を出て当社のある清水まで雨の中を通った65歳のおばあさんがいました。その彼女が退職する日、工場の従業員が勢ぞろいして花束を渡したことがあります。
坂本それこそ強者である社員の人たちが、弱者である高齢の女性の働きぶりを見ていたということです。企業が高齢者と障害者を雇用することがあたり前の社会になってほしいと私は心から願います。
坂本自然に親しむ農作業害者に適していると思います。カタチの良さにはこだわらない、一品一様の個性的な野菜が作れるでしょう。もう一つ、陶芸も向いていると思います。下田にある障害者の作業所では、山中の窯で陶器を作り、アンテナショップで販売しています。そこには陶芸家が作るような芸術的な陶器が並んでいて驚きます。
杉山確かに障害者は健常者とはちがう感性を持っています。学校教育では障害者と健常者は別々に授業を受ける場合が多いのですが、いっしょになって音楽や美術をやればいいと思うくらい、障害を持つ人の感性は豊かですね。清掃技術を身につけることがどうしても難しい障害者の場合、先生のおっしゃる農業と陶芸がひとつの道になるかもしれません。
坂本障害者雇用は、社会全体が強い関心を持つべき問題ですーハートランドが、自社だけでなく他の企業からも雇用の声がかかるようになることを期待します。
杉山今後、障害を持った多くの方々が自立、安心して、長く働けるようにするには社会的連携が必要です。弊社、NPO法人セイセイ生き生きクラブ、就労移行支援事業ハートランドの活動が、そのきっかけになればと思っています。そのためにも、全力をあげてこの新事業に取り組んでいきます。